年間を通してここルクセンブルグで(たぶん)いちばん重要なイベントのひとつ。それがシューバーファウアー(Schueberfouer)。毎年8月の終わりから9月上旬まで、20日間にわたって祝われるこのお祭り、2019年は8月23日から9月11日までの開催です。
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8月に入って市街地の北のはずれにある大きな駐車場Glacisから車が姿を消し、移動遊園地が建設され始めると、今年もシューバーファウアーの時期。地域では最大級のお祭りで、祭りが開催されている20日間のあいだにルクセンブルク国内のみならず、近隣諸国からも200万以上の人々が訪れるとか。ルクセンブルクの人口が56万人なことを考えると、いかに大掛かりなイベントなのかわかります。
移動遊園地とは言ってもなかなか本格的で、ローラーコースター他の絶叫マシン、仮設とは思えない立派なレストラン、そして射的やゲーム、食べ物の屋台などそのアトラクションの数は200あまり、ルクセンブルクの街中に花やしき遊園地が出現したのかと錯覚します。隣接するトラムの駅Theatreを降りると、この楽しそうな入口が。せっかくのお祭りがトラブルで台無しにされないよう、仮設の交番も立ち並んでいます。
ちっちゃなお子様も楽しめるアトラクションも多く、まさに老若男女すべての人のためにある感じ。
射的の屋台はサイズこそ大きいけど日本と同じ。
漫画でしか見たことのないような絵に描いたようなジプシーの占い小屋。中で占ってる人が本当にロマ(ジプシー)なのかは保証しません…。
そしてシューバーファウアーにつきもののブラッドリー(ストリートマーケット)。北フランスの街リールのブラッドリーが有名ですが、実はフランドル地方、北フランスのいろんな街にあるもので、ここルクセンブルクでも2019年は9月2日(月)に90回目が開催されました。中心部の華やかなブランドショップでも店の前に屋台を出しての大売り出しが楽しいですよ。
いつもはちょっとだけ敷居の高いビレロイ&ボッホのお店の前でも屋台を出しての大売り出し。
シューバーファウアーの歴史は古く、1340年に、ルクセンブルクを治めていたボヘミア盲目王ヨハン・フォン・ルクセンブルクが、この地域の通商の発展を目的としてマーケットを開いたのがはじまり。当時は街の反対側、グリュントを見下ろすサン=エスプリにあったシューバーベルク要塞で開かれていました。中世においてヨーロッパの豪族や王たちが覇権を争った軍事的要所であるルクセンブルクは、またイタリアからフランドルに物資を運ぶ商いの理想的な拠点にもなり得る。この地理的な特性に目をつけたヨハンは、この地の経済的発展を目的とした7日間のマーケットを開きます。要は今でいう見本市ですね。このマーケットを目指して各地から商人が大勢やって来るようになり、ヨハン王は街を発展させた統治者としてルクセンブルクでは尊敬を集めているのですが、地元のボヘミアでは暗愚な王として人気がイマイチらしいので人の評価とはわからないものです。忠臣蔵の悪役である吉良上野介が領地では名君として人気が高いようなものでしょうか。
珍しい物産を売りに来る行商人たちのマーケットだった昔を思わせる屋台も多く軒を並べるのが、普通のお祭りと違うところ。アーケードゲームが並ぶゲームコーナーも充実。スロットマシーンやコイン落としなど、レトロな筐体が並んでおります。
中世の終わりには家畜の取引も行われる市場として発達し、産業革命以後の近代になると現代のような遊園地も同時に開かれ、マーケットの場所は19世紀の終わりに今のグラシスに移動し、時代に合わせて変化していったシューバーファウアーですが、見本市だった昔の面影は今でも屋台を並べる行商人たちに見ることが出来ます。トラムの線路沿いに並ぶ健康製品、異国のスパイス、エキゾチックな美術品やアクセサリー、日本の100円ショップで売っているような便利グッズの屋台を冷やかしているのはルクセンブルクの地元民たち。目新しい商品を説明する屋台の商売人の口上に聞き入ってつい要らないものを買っているその姿は、デパートの物産展やスーパーの実演販売に群がるわが日本の同胞と一緒…いえ、ショッピングモールもamazonもなかった時代の人々とも同じなのかも知れません。時代も国境も越えて、なぜか日本人の郷愁すら誘うお祭りを、地元民や観光客に混じって楽しんでみませんか。
2019年の日程:8月23日(金)から9月11日(水)まで
場所:グラシスGlacis(トラム最寄駅:Theatre)P&R 駐車場から無料シャトルバス(37番、29番)あり。
アトラクション営業時間: 14〜25時(月−木)、14〜26時(金)、12〜26時(土)、12〜25時(日)