ルクセンブルクのCOVID-19対策

2020年3月に出されたルクセンブルク政府の国家非常事態宣言は、6月24日にその期間を終え公式に解除されました。かわって新しく制定された感染予防法が今後の社会生活に適用されます。日本でも話題を呼んだ全住民PCR検査などを含む2020年6月末現在のルクセンブルクの衛生基準はこんな感じ。

感染拡大を防ぐため、ボーダーを閉じて域外からの渡航をシャットダウンしていたEUですが、7月1日から日本を含む安全な15国からの渡航は可能との勧告が出ました。 EUの中での行き来は自由ですが、同じEU内でも国や地域によって細かい感染予防のためのルールは違ってきます。ルクセンブルクの場合は「検査」「隔離」「感染経路の特定」の徹底というWHOの基本方針に基づいた戦略で、特にソーシャル・ディスタンスを取るのが難しい公共の場でのマスク着用をいち早く義務化、全住民と越境通勤者に50枚ずつの使い捨てマスクが配布もされました。

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4月下旬にすべての住民あてに、ひとり5枚ずつ郵送されたマスク

2020年7月現在、ルクセンブルクで完全に禁止されているのは
1. ナイトクラブ
2. 室内でのお祭りやイベント
のふたつ。とはいえ美術館や劇場など、文化やスポーツの公共イベントは、室内・屋外に限らず「参加者に席が割り当てられかつイベント中は着席すること」「2mの社会的距離を取るか、それが難しい場合はマスクを着用すること」のふたつが守られてる条件で可能です。イベントのスタッフはマスク着用が必須。在ルクセンブルク日本大使館のページで新型コロナウィルスの最新情報が随時発信されています。

ルクセンブルクでの新しい感染予防対策

6月24日から実施された感染予防新法によるルクセンブルクでの対策は、健康省のこちら(PDFファイル)の熟読をおすすめ。英語ですがイラスト付きなのでわかりやすいです。フランス語版ドイツ語版ルクセンブルク語版もあり。

ルクセンブルクへの入国

日本在住者(日本の在住権を有する者)は7月1日よりシェンゲン圏内(EU加盟国及びアイスランド、スイス、リヒテンシュタイン、ノルウェー)への不要不急の渡航も許可されることになりました。入国後の自主隔離などは特に義務ではありません。シェンゲン圏内の移動は一部ロックダウン中の地域を除いて基本的には制限されていません。

*注意! 現在邦人のEUへの入国が、特にドイツ・フランクフルトで拒否される事案が相次いでいるそうです。日本へのEU諸国からの入国が制限されているためで、上記の日本人に対する渡航の許可も実際には各国の判断に委ねられるとのこと。詳しくは外務省のホームページをご参照ください。日本からルクセンブルクへの直行便はもともと無いことに加えて、現在は他の欧州路線も減便されているためフランクフルト経由便が数少ない選択肢の一つになっていますが、経路の選択には注意が必要です。

(EUと今回認められた安全な15カ国以外(第三国)の市民の入国は、農業などの季節労働者、医療関係者およびEU市民の家族に対してと、仕事、研究、留学目的での場合、また家族の緊急事態など人道的見地から止むを得ない理由での場合に限り認められています。ちなみに英国籍の人とその家族も2020年いっぱいはEU市民と同じ扱いとなります)

公共の交通機関

バスやトラム、電車に乗る場合はマスクの着用が義務となっています。ただしロックダウンが緩和された時点で、13歳以下の子どもについてはマスク着用は免除になっています、子どもたちの通学で公共交通機関を使うときは、学校で配布されるスヌード状のスカーフで口と鼻を覆うよう指導しています。

飲食店


同居していない相手との会食は1テーブルにつき10人まで。着席中はマスクを外して会話をしても良いが、お手洗いなどテーブルを離れての店内の移動時はマスク着用。スタッフはマスク着用でサーブ、テーブルとテーブルの間は1.5m離すか、またはパーテーションなどで物理的に仕切る。すべてのレストラン、カフェ、バーは夜12時で閉店。

お店など

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バーゲンでもないのに入場制限で店の外に行列

6月末から始まり7月下旬まで続くバーゲン期間を見据え各商店は一度に入店出来る購買者の数を制限したり、滞在時間を制限したり、順路を示して(床に正しい動線を示す矢印があることが多い)購買者同士の距離を取れるよう工夫しています。レジ前には防護シールド、カードリーダーの暗証番号を入れる時もその度ごとに消毒したり注意を払っています。ほとんどのお店では入り口に消毒ハンドジェルを設置し入店前に掌を消毒させているので商品を手にとって見るのは割と自由。お店に入る時には必ずマスクを。

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スーパーの野菜売り場も間仕切りが

コンサートホール・劇場・映画および美術館

コンサート、演劇のチケットは前売りのみ。映画館はこの限りではありませんが隣り合って座れるのは同居している4人までに限り、また座席は観客側からは指定出来ず、劇場側から割り当てられます。自分の席に座っている間はマスクを外しても良いですが、着席するまでとお手洗いなど離席して歩き回る時はマスク着用。ちなみにルクセンブルク市交響楽団のホームであるフィルハーモニー・ルクセンブルクでは今のところ毎週木曜日にコンサートがありますが、7月下旬から9月まではシーズンオフ。ルクセンブルク市立劇場の二つの劇場(グランド・テアトルとカプチン劇場)は全演目キャンセル、オンライン配信のみ。映画館はほぼ開いています。美術館は入場制限ありで、入り口にある手指消毒液での消毒と館内マスク着用は必須が基本です。

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美術館の入場に並ぶ

観光スポット

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ツーリスト・インフォメーションは再開!

EU内での移動は制限がないので、実は結構観光客が戻ってきています。おもな観光スポットは開いているところも多いですがボックの砲台は今のところ(7月上旬現在)閉鎖しています。また教会なども、本来の目的である礼拝が普通に行われていなかったりしているので、地元の信者さんたちの邪魔にならないように気をつけて。

ジム・スパ・プールなど

施設内では2m以上のソーシャル・ディスタンスを維持するかマスクを着用することが求められ、また接触型のスポーツは禁止。プール内ではもちろんマスク着用は必要ありませんが、施設ごとの安全対策を遵守。サウナは1キャビンに1人まで。

公園の遊具など


ロックダウン中は使用を禁止されていましたが、現在は普通に遊べます。ルクセンブルクは市内の公園のあちこちに、子供の遊具だけでなく大人向けのトレーニング器械もありますが、これも他者との社会的距離をとりながらなら使用可能。

ナイトクラブ

休業。

大規模PCR検査

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歩行者やスクーターや自転車も一緒に並ぶドライブスルー検査場

日本でも報道され話題になったのがルクセンブルクの全住民を対象にした大規模検査。60万人の住民に加え、ルクセンブルクの企業で働いている近隣国からの越境通勤者20万人も対象になります。感染を極力避けながら経済活動を平常化するのが目的で、特に無症状のウィルス感染者を見つけて隔離し、労働環境を安全にするのが目的。1日2万人検査体制で、2週間ごとに20万人にレターを送り、受け取った希望者はオンラインで自分の都合のいい検査会場と日時を予約する仕組みです。特に人と接触する機会が多い医療従事者や介護職、接客業者は定期的に何度も受けることが出来ます。ただこの検査、鳴り物入りで始めたのはいいけれど案内を受け取った住民の1/4ほどしか検査を受けていない実態がわかり、目下政府が「私の検査、あなたの安心」キャンペーンをしているところです。

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バス停にも「検査を受けて大口開けよう!」のポスター

なかなか検査を受けられない国からすると贅沢すぎる……。ちなみに、ルクセンブルク唯一の旅客空港フィンデルでは到着ゲートにPCR検査場があって希望すれば旅行者でも検査を受けられるとか。ルクセンブルクは事前のアナウンスなしで廃止してしまうことが多いのでいつまで実施しているかはわかりませんが、到着時に幸運にも試験場があったら受けてみるのもいいかも。検査自体は綿棒を使って喉の奥から検体を取り出すもので2分くらいで終了、陰性なら携帯電話にSMSメッセージで、陽性なら電話で知らせてくれます。

COVID-19感染者との接触があった場合

14日間の間、自分で経過観察をしながら日常生活を送ることになります。1日2回体温を測り、咳が出たり呼吸に息苦しさがないかどうか自分でチェックします。生活への制限(外出自粛など)は特にありません。

症状が出たら

症状が出た場合、すぐに自己隔離のうえかかりつけ医に相談することが強く推奨されます。もちろん直接病院に行くのは厳禁。まずは電話またはオンライン受診、そのためルクセンブルク健康省がCOVID-19感染を防ぐeConsultというポータルサイトを立ち上げ……たのはよかったのですが、今現在システム調整中で使えず、7月中旬再開予定。それまではコロナ以前からあったDOCTENAというオンライン病院予約システムで代用してとのこと。

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重症化しやすい高齢者や病人へのお見舞いも十分な安全対策をとって短い時間なら可能になっています。写真は市内の高齢者ケアホーム、柵を挟んで(見えにくいんですが透明プラスチックで仕切りがしてあります)入居者が安全に家族と面会できるよう即席の屋外面会室が作られていました。

人口が少ないので総数的には目立たないのですが、大規模な感染を出し野戦病院まで設置されたフランスのアルザス地方、ドイツで最初の死者を出したノルトライン=ヴェストファーレン州に隣接するルクセンブルクでは、人口100万人当たりの感染・死者数がそれぞれ7,223人、176人と(日本はそれぞれ152人、8人)結構被害は甚大だったのです。
しかしベッテル首相とレナート保健相のリーダーシップのもと、新規感染数が2桁になった3月12日で学校閉鎖、ロックダウンと緊急事態宣言が数日中に続き、医療資材の確保、臨時COVID−19センターの設置など設備の増強、市内のホテルを借り上げての越境通勤の医療従事者の宿泊所の確保、ボーナス支給や臨時スタッフの待遇の整備など医療スタッフへのケア、インテンシブケアユニットの倍以上の増床など、十分な医療が行えるよう最大限の努力をしてきました。毎日のように首相、保健相そろっての会見を行い、小さい国ならではのフットワークを生かして次々に取られる対策は、ロックダウン中の住民を安心させるに十分でした。
また、もともと働き方の多様性と国際企業の多さもあり、企業にテレワークをすすめていたのも幸いしました。ルクセンブルクの公立の学校では以前から生徒一人ひとりに学習用のタブレットを配布していたため、教育においても遠隔授業への移行が比較的スムースに行われたようです。
近隣諸国からの患者を受け入れていたほど十分な医療リソースで5月末からはCOVID-19感染による死者を一人も出さず、慎重な4段階のロックダウン緩和を経て少しずつ日常が戻ってきたルクセンブルク。政府の出口戦略が慎重過ぎると組合に突き上げられもし、また比較的打撃の少ない金融が根幹産業という恵まれた条件でも、やはり失業率の上昇と経済成長の停滞は深刻です。これから住民への生活支援と経済回復、ロックダウン疲れと気の緩みによる再度の新規感染の上昇と、問題は山積みながら、COVID-19後の新しい生活が始まっています。

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ロックダウン中の人っ子一人いないアルム広場

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